ibisのAIお手本搭載未遂事件考察~AIお手本が持つ危険性について

※この記事は2024年の1月に書かれたもので、私のAI機能についての個人的見解が書かれています。AI機能の状況やそれをとりまく人々や私の感想は、今後も変化し続けると思いますこの記事は時期が進み、私自身がこの記事に違和感を感じるようになった時、削除する可能性があります。※

 

さて、私達の暮らしを便利で時短で豊かなものにしてくれるかもしれないAI世間との関係性に関するさまざまな事件が毎日のように起こっているわけなんだけど、

ここでは私が生息する世界にもっとも近いところで起こった事件、

ibisAI搭載未遂事件について記していきたいと思います。

 

以下は30秒でわかる事件のあらすじです。

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いつ起こったか:2024年1月10日

内容: スマホで絵が描けるハイグレードなお絵描きソフト"ibis Paint"が、課金しているユーザー対象の新機能アップグレードとして、AIお手本を実装。

その機能と使い方を説明した画像を、ibis運営が公式がX(旧名称Twitter笑)にポストしたところ、数時間で『アイビス』がトレンドワード入り

コメントの多数がRTではなく引用RTで、AI実装に対して否定的な意見が数多く飛び交い、当日のX界隈のイラスト、漫画好きの民たちアイビス事件で大騒ぎとなり、結果、

ibis社はAI実装の機能をわずか一日でとりやめた

 

というものです。

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さいしょ書いた「AIと世間との関係性に関するさまざまな事件」は、

世界中の法廷で、

そして今回の騒動のように企業とユーザーとの間で、

そしてクライアント(発注する側)とワーカー(発注されて描く/書く側)との間で、

日々起こりまくっているわけなのだけど、(実例のひとつに関しては、後述します。)

 

まだまだ、まだまだ、まだまだまだ、…事例が足りない

さて、私は

当日の午前中に、ibisのAI搭載をお知らせするツイートと、

そのツイートのAI画像を見て、

「トホホ」と思いました

 



 トホホと思った後、

絵を描く民、

そして描かれた絵を楽しむ民

のツイートをささっと読みました。

 

そして、自分もこの動きには加担するべきだと考えたので、

ibisのAI搭載否定的なツイートを一発撃ってから家を出て、そのツイートがはるか遠くにあるibisさんの社屋の屋根にポコッ、と当たったのを確認してから、シノギに向かいました。

 

夕方戻ってきて、一仕事終えてXを見たところ、ibisAI実装を取り下げしたことを公式のページで発表したことが判明しました。

 

 

 アイビス! 見直したよ。

私は胸をなでおろしました。

これで数万人の絵をこれから精進するいい子たちが、つまらんAIのお手本を見ないで済むと思ったからです。

 

 あやべっ!!

クールに書こうと思ってても、ついつい感情が出てしまうっ…。

 

 私達はたくさんの違った意見や感性を持った人たちと共生しています。

AI画を楽しんでいる人AI画をつくっている人は、今回の実装取り下げを、非常に残念なことと感じたようですね。

日本のAI普及は驚くほど遅れている。残念」

日本人のAIアレルギーがまた事件を引き起こし、AIの進歩を止めた。恥ずべき事だ」  というコメントをいくつも読みました。

 

まあでも、もしよかったら、猫井がなぜ今回のAI実装に反対したかを以下にまとめてみたので、読んでみてください。 長いけど。

 

あそうだ! その前に…

お絵描き鑑賞は好きだけど、実践にそれほど経験ない人は、

ibisPaintが、国産(名古屋産)の「スマホで指先で絵を描くことに特化した大層優秀なお絵描きアプリである」ということを知ってください。(アイビスに詳しい人は↓下の***マークまですっ飛ばしてね!!)

 

スマホの限られた画面を、指でピンチ(拡大)しながら、反転、回転などのツールを駆使して非常にストレスなく、直観的に分かりやすく絵を形にできるアプリ、それがibisです。

 

PCでのお絵描きだと、(たまたま)お絵描きソフトの礎となったPhotoshop(「写真屋」なのに…)や、クリップスタジオなどにシェアは劣るものの、

アプリダウンロードは実に三億超えを誇り、Windows版も着実にシェアを伸ばしている。 

 

 なにより特筆すべきなのは、ユーザー層が小学生からスマホ所持が当たり前だった10代を中心に、上はせいぜい30代という圧倒的なユーザー層の平均年齢の若さ

 

 一部のかたはご存じのように、猫井は七つのシノギのなかのひとつとして、若年層の良い子達の絵の先生などもやっているのですが、

「お絵描きはアイビスで始めたから、PCでお絵描きできるようになっても、アイビスを使いたい」という意見が多く聞かれていて、

現在指でホイホイ絵を描いている彼等のこと、やがてPCに移行したら、液タブを使わなくても、タブレットや、なんならマウスでも問題なく作業を続けると確信しています。

 

追加情報:オタク総研さんの記事に、アイビスユーザー層の内訳がグラフにて紹介されており、想像の倍以上に若年層だったので腰抜かしました

 

***

さて前置きが長くなりましたが、猫井が今回のAI実装に反対だった第一、そしていちばんの理由は、これ。

 

パッと出てくるプアなAI絵脳内にごちゃごちゃカオスのようにうごめいている絵のイメージをスポイルされてほしくない

 

絵描きという生き物は、脳内に独自の花畑を持っています。

豊かな花畑を持つ人もいれば、まだ花も植物もほとんどない花畑を持つ人もいます。

 私が絵描きと呼んでいるのは、プロ、アマ、すべての「絵を描きたい」「描いてみたい」人間のことです。

花畑とは、「これからなにを描きたいか」の断片的なイメージを摸索し、整理する脳内のスペースのことです。

 

 たとえば、銀の髪をなびかせ、同じく銀色の瞳を持つ美しいクールな少女を描いてみたい、そう思ったとします。

 

 そのとき、絵描きの脳内で、絵描きの花畑にあるいくつかの花や植物が、集められ、分類され、畑の重要な位置に配置されるという作業が行われます。

 花や植物とは、いままで目にしたキャラクターやヒロイン、アニメや実際の女の子の記憶の断片や、それらを基にして自分が創り上げたあいまいなイメージのことです。 

 脳内にしまわれていた、銀髪の少女に似合う眼の形や、髪型や、表情といったものの断片を、絵描きは畑の奥まで入っていき探し当て、銀髪の少女を描くための植え込みをどんどん目の前に並べ、準備していく。

 

花畑に植物が豊かにある人は、それを瞬時に行えるし、畑の垣根を乗り越えて、いままで観た映画のキャラクターや、読んだ小説のヒロインや、そのヒロインの口調まで材料として集め、組みたて始めるでしょう。

 そして、ゼロからいきなりなんの資料も見ずに、銀髪の少女の絵を描きはじめるかもしれません。

 

脳内の畑に植物がそれほどない人や、今回使うべき植物が広くごちゃごちゃした畑のどこに生えているか思い出せなくてパッと取り出せない人、植物を目の前に集めるのがめんどくさい人は、スマホやPCで画像検索をして、それを植物(絵の素材)とする人も多いと思います。

それは自然な行動です。検索によってあらたな発見組み合わせ発想も得られるでしょう。

 

AIというのは、人の脳を目標に開発されていくものなので、上記の作業を人工知能で行い、形にして出すというのがお仕事です。

 つまり、絵描きが絵を描くとき、脳内で行っていた上記のデリケートかつもっとも重要めんどくさい作業を、AIが代行してくれる。というのが今回のAIお手本の趣旨となるわけです。 便利ですね。

 

 ここで、私が絵を描くヒトとして思っていることとして、

 

 さっき書いた、ああだこうだと天然で脳内の畑に並べられる素材というのは、そういった推敲の経験が少なければ少ないほど、はかなく、しんどく、あやふやなものです。

 

 ひとつ、ふたつ、それもディテールがはっきりしない状態でやっと何個か頭の中に並べられていた素材たちなんて、

目の前にパッと出てきた「完成品に近い」AIお手本に、

いとも簡単に描きかえられてしまうことでしょう。

そして、絵描きは「そうだ、これが、自分が描きたかったキャラクターだったんだ!!」と思うかもしれません。

 

 発想をすることない絵描きのはじまりです。

 

 私の脳内にはすでにさまざまな必要な植物必要でない植物でジャングルのようです。

私はそれらをうまく整頓することができないため、検索を頼りにするほうです。

ただし、検索をすすめるうえで「ああいった服を紫色にして着せたい」「あんな感じの眼」と、脳内のお花畑の奥(のどこか)にある植物の形の詳細を、なんとか確認したいがために検索しています。 

そのとき荒れててジャングル化ははげしくとも、私の脳内お花畑はある程度は機能していると思います。

 

そのため、最初に書かれた簡単なスケッチとAIのサンプル画像を目にしたとき、私には違和感しかありませんでした。

 

 AI画像の少女はスケッチが持つ微妙な体つきの角度も、光の設定も微妙な瞳孔の向きも、まるきり反映していません。

 まるでコメディーのような…

 極端なたとえですが、そろそろ婚活したいなってマッチング会社と契約したら、「こちら契約のプレゼントです。こんな素敵な人と結婚できるといいですね!」といって精密に造られた等身大マネキンが送られてきたって感じです。(注:私の周辺にはマネキンのほうが好きなお友達も多いのですが、ややこしくなるので今回は棚に上げます)

 

足りないまま完成された形の典型が、そこに結果のように置かれていてげんなりしました。

 

お手本にすぎないのです。そして、いくつものタッチで生成されたお手本を見ることができるようにした。つまりは、いくつもの選択肢があります。」と、運営サイドの人は考えていたのでしょうか。

 

しかし、これらサンプルのように非常に足りない完成形のかずかずを、お手本として生成する機能の実装を企画し、それを良かれとしていたなら…

 

脳内の大切な花畑をスポイルする可能性のあるものを企画してしまったなら…

 

それは間違いであったと思わざるを得ません。

 

ことに、これからそういった花畑をどんどん広大していくべき大勢の若手が愛用しているツールにおいてです。

 

さて。

長く(私が個人的に考える)AIお手本がお絵描き良い子にもたらす危険性を、

私なりの(非現実的かつ抽象的な表現を用いて)アツく語ってしまいましたが、

 

 そういった絵描きの発想うんぬんを配慮いただいたのか、

単にAIアレルギーwの皆様の強い反応に恐れをなしたのか、

 

公式は発表当日の夕刻に「AI機能の取り下げ」を発表しました。

 

私は個人的に、公式の判断を支持していきたいと思います。

これで、安心して私の大事なお絵描き良い子のみんなに、ひきつづきアイビスでいろいろな素晴らしい世界を創造していってもらえる。

 そう思ったことを、今回ここに記録しておきたいと思います。

 

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うぐぐ、かなり長くなってしまった。しかし、乗りかかった舟。もうちょっとだけ続けます。

猫井が今回のAI実装に反対だった第2の理由を、さらっと書きます。

 

私は法律関係の専門家ではないのと、AIの著作権に関しては、現在も(とくに海外の)法廷でバトルまっただなか状態なので、日和見が強いのですが、いちおう記しておくと、

 

今回の実装未遂事件、公式が「あくまで」お手本という扱いで、そのあたりの著作権界隈のさまざまな問題点をかわそうとしたのが明確ではあるのですが…

 

 たとえばお絵描き見本を一部トレスして、絵を完成させたり、

髪や肌、眼の塗りに一部流用して作品を完成させた際、

 

 そもそもこのAIがどういった著作物を学習させどうやって生成されているかは、結局はそのAIのシステムの蚊帳の中なので (注:現在、その学習に関する裁判がアメリカ・ニューヨークタイムズ社(原告側)とOpenAI社(ChatGPT)&マイクロソフト社(被告側)間で行われています)

 

もしもそのAIを一部に使用して創作されたイラストAIの二次使用作品として取り扱われた際に(そもそも、そういった形で取り扱われるのか、取り扱われないのかに関してさえ、現在は確固たる決め打ちの判例がそれほど出ていない状態。)、

 

そのイラストじたい、下記判例のように「このイラストは、純然たる創作物とは認められなくなりました」という可能性が出てくるかもしれない。

 

 

2020年代は、これらAIと著作権に関する事例、判例が絶え間なくこの世を騒がせ続けることとなるでしょう。

 

www.hitachi-solutions-create.co.jp

 

 

同じ絵描きでも、こういうことが、気になる人と気にならない人でめちゃくちゃ分かれるかもしれない

 

思い過ごしだとか、早めにどんどん使ったほうが勝ちと思ってる人はそれはそれでじゃんじゃん使ってください。

(私は個人的には架空のお菓子とかをでっちあげて大笑いするのに使用しています。)

 

 お金がかかわってくる漫画やイラストの制作に関しては、AIは使用していません。

私は基本心配性だし、漫画家のツレの作品を商売の基として預かっているという責任感も大きいです。時間とエネルギーを費やして創作したものは100%自分たちの管理可に置いて販売したいので、このあたりはしばらく気になり続けるでしょ

 

今回のアイビスAIお手本搭載遂事件に戻せば、ibis paintが、全世界の、とくに著作権お絵描きの権利うんぬんに対してとても経験値が少ない若年層のユーザーを山ほど抱えている、ということもあり、大いなる危惧がありました

 

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めちゃくちゃ長くなってしまいましたが、

以上が、私猫井が一個人として、なぜ優秀なお絵描きツールアイビスペイントのAIお手本実装に対してまっこうから反対の立場をとったのか。になります。

 

アイビスの今後のますますの発展と進化をお祈り申し上げます。

ibispaint.com

 

今回、個人的にはハッピーエンドだったので、アイビス関連のグッズやツールを貼ってスポンサーにしてみました。(リンクはアフィリエイトを含んでいます。猫井に浄財いただけるかたは、どうぞそのままご利用ください。資金は猫井+千之ナイフの消耗品へと供給されています。)

 

まずはアイビスのマニュアル (新しい順に並べてあります)

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[公式]アイビスペイントの教科書 (2023年)

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アイビスペイント公式ガイド プロの描き方を完全マスター!(2022年11月)

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アイビスペイント公式ガイドブック (2020年1月)

 

次に、指先お絵描きに限界を感じたときの、ペン

(信頼のエレコムからセレクト)

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エレコム タッチペン ロングタイプ 極細 対応機種が合えばかなりおトク。

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機種別) エレコム タッチぺン スタイラスペン
アンドロイド用。対応機種必ず確認してくださいね

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iPhone用。対応機種必ず確認してくださいね

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[おまけ] 絵を描く仲間たちへ
猫井ブログの絵関連の記事

nekoipsydoll.hatenablog.com

 

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