文化庁の「AIと著作権」をひもといた!!

※この記事のおおもとは2024年2月にまとめられ、その後、およそ8か月ほどさまざまなAI生成問題に関しての様子見をしつつも、結局はここらでまとめとかなきゃいけないかな…みたいな見切り発車的に発表されたものです。

 AI機能の状況やそれにかかわる人々の状況、そしてルールについては、今後も変化し続けると思いますこの記事は時期が進み、私自身がこの記事に違和感を感じるようになった時、削除する可能性があります。※

 

文化庁のAIに対する考え方まとめ(2023年6月版) AIと著作権 をひもといた!!!

 

はいっ! こちらがその書類
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf

今回はこちらを読み解いていきます。

 

「AIアートって結局どうなの? なんでいろいろ言われてるの?」

ということが知りたい人は、

この書類が今後しばらく日本のAI画像生成物の取り扱い、販売に関しての指針になることは間違いないので、がまんしてじっくり読むことをお勧めしますが、

 

短時間のうちに情報を得たい場合や、

難しい情報を読み解くことが苦手な人は、このブログをご利用いただければ幸いです。

途中、ページも書いてあるので、ばっちり読み解きたい人は、この記事を片手に実際の書類と照らし合わせながら読んでいただけると幸いです。

 

もしあなたが小中高生だったり、複雑なことを考えるのが苦手だったり、もしくはめちゃくちゃ急いでいる場合は、グリーンの部分だけを読んでください。分かりやすく書いてあります。

 

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さて

ざっくり言うとこの報告書では、AI生成物とクリエーターとの著作権のありかたについて、

「第1部 著作権制度の概要」


「第2部 AIと著作権
とで、分けてまとめられています。

 

第1部 著作権制度の概要は、著作権とはどんなふうに発生するか、著作権法に違反するというのがどういうことなのか、これはありかなしか、などがおさらいとしてまとめられています。

これはこれで興味深いし、その後のAI生成物関連の定義にかかわる大事な部分ですが、時間ない人はすっとばしても大丈夫です。

.

第2部 AIと著作権以降がこの書類のいちばんのキモで、以下のポイントが挙げられています。

 

・AI生成物が誰かの作品の画風にとても似ていた場合、著作権侵害になるか否かは、普通の人が手描きで描いたものや、PCなどを使ってAI不使用で描いた作品と同じように判断されます。(P43)

 

なので、

AI生成物が、とある著作権のある作品と「そっくり」と判定された場合は、著作権侵害にあたり、(P44-45) 

著作権を持っているクリエイターや会社は、「私の(わが社の)著作権を侵害している」ということで利用行為の差止請求損害賠償請求、(AI生成に故意や悪意がある場合は刑事罰)といった民事上の請求ができます。(P51-53)

 

AI絵の生成者は、

私的に鑑賞するため画像等を生成することは著作権侵害にはなりません。
(私的な利用は{権利制限規定}というものにあたります)(P46)

 

AI生成作品を利用した画像、画集の販売など、個人的使用ではなく享受目的のもの(お金目的のもの)が、従来の画家、漫画家、イラストレーターの作品や画風と似ていた場合、

 生成した画像等をアップロードして公表したり、生成した画像等の複製物(イラスト集など)を販売することは、事前にその著作物の著作権者(画家とか漫画家、イラストレーター)の利用許諾が必要で、許諾なくやると著作権侵害となります。(P47)

 

+ - + - + - + - +

人間のオトナの世界の単語ってややこしい言葉で一杯ですね。なので、

 

これを実例をもとに説明してみたいと思います。

 

ある人がXxXxXというAIアートを作成するソフトを使用しはじめました。

それは、プロンプト(呪文)の入れ方しだいで、世にも素敵なイメージを作ってくれるのです。

その人は時間をかけて、素晴らしいAIアート作品をいくつも完成させました。

 

A パソコンのデスクトップの画は、すべて生成したAIアート作品にしました。

いちばん気に入ったものを大きなポスターにして、部屋に飾りました。

 

B 友達が部屋に遊びに来た時、友達もそのAIアート作品を見ました。

友達もすごく気に入ってくれたので、絵ハガキとしてプリントしてあげました。

 

たくさんのAIアート作品がたまっていきました。

友達からの評判だけではなくて、見知らぬ人からの感想も欲しくなりました。

また、その人は自分に合った副業を探していたところでもありました。

 

そこで、その人は、

 

C AIアート作品のデジタル画集や、グッズを作って売ったところ、売れました。

 

D AIアート作品をNFT化してNFT販売サイトに置いたところ、売れました。(NFTは仮想通貨を使用してデジタルアートの権利を確定し、販売するシステムです。こちらに関しては、あとで書く裁判の事例にも登場するので、よかったら覚えておいてください。)

 

E (SNSの)Xで作品を発表したところ、バズったので、広告収益が出ました。

 

F  AIアート作品を、画を素材として使用するための有料サイト(Pixtaなど)に置き、有料で購入してもらえるようにしたところ、収益が出ました。

 

ところが、あるとき、突然まったく知らないアーティストから連絡が来ました。

アーティストは、「貴方がAIアートで造ったものは、ぜんぶ私の作品を学習させて作っている。私の絵の世界とまるで同じだ。」と言い、

AIアート生成者に対して、販売の停止と、慰謝料、販売やXからの広告費などを含めた費用などを請求してきました。

 

AIアート生成者にはまったく覚えがないことです。理不尽な訴えだとおもったため、法廷にて争うことにしました。

 

この法廷で、もしAIアート生成者が負けると。

 

AIアート生成者は

 

A は続けていいのですが、

C D E Fはできなくなります。

(Bはプレゼントということなのでお金は発生していません。ばら撒いた人数によると思います。)

もしくは、勝訴したアーティストと交渉のうえ、C D E Fを続ける場合に、アーティストのクレジットをどこかに入れたり、利益(印税や使用料など)を支払う必要が出ます。

 

この法廷で、もしAIアート生成者が勝つと(アーティストの訴えが通らなかった場合)

 

AIアート生成物が、「そっくりだ」と訴えを起こしたアーティスト作品とは関係ないものだということが法律的にみとめられたことになるので、

 

AIアート生成者は、これまでのすべての活動(A---F)を、引き続き、(アーティストになにもお金を払うことなく) 続けることができます。

 

「AIアート生成者」対「従来のアーティスト」ということで書いてみましたが、

 

これはAIがこの世に登場するずっと前から行われてきた、

「とあるアーティスト」対「別のアーティスト」の、

「パクってない」「いいやパクられた」著作権係争とまるで同じです。

 

つまり、文化庁は、今回の書類「AIと著作権」で、

AIだろうがAIでなかろうが、つくられた作品に対しては、まったく同じように著作権は争われるべきである という定義づけをしたのです。

 

書類には、生成者はなるべく「そっくりでないもの」「従来のアーティストに文句をつけられないようなもの」を造るようにしてね… というアドバイスが載っています。(P54)

 

ちなみに

この書類AIと著作権では、

AI生成物は「著作物」なのか・著作者は誰か
という深遠なテーマについても触れています。(P56以降)

 

現在の結論としては、

 

AIが自律的に生成したものは、 「思想又は感情を創作的に表現
したものではなく著作物に該当しないと考えられます。

 

・これに対して、人が思想感情を創作的に表現するための「道具」
としてAIを使用したものと認められれば著作物に該当し
AI利用者が著作者となると考えられます。(P57)

 

??? これをどうやって法で認めるつもりなのでしょうか ??? 

 

P58からの、AI生成物は「著作物」に当たるか・著作者は誰かでは、どんどん問題が哲学的になってきます。

そして、生成者に

創作意図」があるか

創作的寄与」と認められる行為を行ったか

という踏み分けで解決できるのでは、ということが書かれています。

 

でも、私はそれは考え方のヒントにはなっても解決法にはまったくならないと思いました。

 

実際、画家や漫画家やイラストレーター VS、AI生成者の裁判になったら、

AI生成者「私はこのコを創作したんです!」

裁判員「こいつは本気の創作のつもりでAIで造ってる。眼を見ればわかるよ!!」

みたいなグダグダの観念話になっちゃって、それじゃ裁判の意味ないじゃないですか。

 

P60には、今後の課題が項目別にまとめられています。結局、結論は出せていないまま。だからたぶん、文化庁汗ダラダラかきながらまとめたんだと思います。

ひとつひとつに突っ込みを入れたいところですが、それは意味が薄いので、文化庁には、もっともっと「このソフトウェアで、このプロンプトで造られて、この作家が怒った」的具体例を集めていってほしいなと思いました。

 (注: 裁判にならないと、完全な詳細は明らかにはならないと思うので、いわゆる「情報として出ている」部分のみの収集でも構わないと思います。)

 

 例を集め集めれば、やがて問題になっているソフトウェアや、問題になる画風や、傾向が明らかになるはずです。 文化庁という「お上」が公表するソフトウェアとなれば、「」のお墨付きをいただいたようなもの…こうやって我々国民が既存のソフトウェアプラグインを淘汰していったっていいんじゃないですか?

 

ガンバレ文化庁!!  超えろ消費者庁!!

 

創造物であるか創造物でないか」を、法廷の場で、生臭いたくさんの訴訟例によって整えていくことになる不幸は、

できれば避けなければいけないと思います。

 

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以降は、おまけですが、相当大事なおまけなので、AI生成画や、AI学習防止策に興味があるかたは、できるだけ目を通していただければ幸いです。

 

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AI生成関連会社、画像情報提供会社 VS アーティスト訴訟

 

2023年1月以降、アメリカで、2名の代表と10人のアーティストからなるチームが、

Stability AI  (LAIONの会社)

DeviantArt (英語圏最大のイラスト作品投稿サイト)

Midjourney

Runway AI

Google

を相手取り、訴訟をおこしています。

 

これは、さきほど文化庁の例で書いたAI生成者従来のアーティストとの個々の係争ではなく、もっともっと根本的、根源的な係争で、

 

従来のアーティスト達

AIソフトウェア開発会社と、AIに学習させた学習用素材を提供した会社

との全面戦争のようなものであり、

訴えられた会社たちが、「望んでないのに学習に使われてしまった従来の作品やアーティスト」に責任を取るか否か決まってくる可能性まで含む大きな係争でした。

 

(注: この係争の原告のひとつになっているDeviant Artは、英語圏のPixivのような「お絵描き作品」中心のイラストレータSNSサイトで、AI画像の学習用の情報データベースLAIONに、莫大な量の学習用の絵を学習させてしまっていたことが判明しています。)

 

Stable Diffusion 訴訟ウェブサイト

stablediffusionlitigation.com

 

結論: 2023年の暮れ、裁判所は「資料不十分」として、アーティストチーム側の訴えを却下しました。アーティストたちが主張する「これがAIにパクられてますっ」という作品達のすべてが、アーティスト達本人のものであるというのを法的に証拠づけるための米国著作権局に登録されていなかった、というのが原因だそうです。(ニュースのリンク。日本語なので綺麗にまとめてあります)

 

結局、アメリカの法律も、様子見しているのかぁ…ってとこですね。

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宇宙のオペラ劇場』(Théâtre D'opéra Spatial)事件

 

2022年、AI黎明期にミッドジャーニーで生成された『宇宙のオペラ劇場』(Théâtre D'opéra Spatial)は、コロラド州の年間美術コンテストのデジタル・アート部門の一位を受賞、その後に生成者(デジタル・クリエイターと彼は名乗っています)ジェイソン・アレンがAIで描いたと公開、全世界がびっくりこいた作品です。
 
これはこれでひとつの事件だったのですが、次なる宇宙のオペラ劇場事件は(なんかワイドドラマのタイトルみたいになってきた)、2023年秋。『宇宙のオペラ劇場』は米国著作権局にて著作権登録を拒絶されました。これにより、ジェイソンは法的な「作者」と言えなくなってしまったのです。

624個のテキストベースのプロンプト(命令文)を書いて指示を出し、シーンの調整、焦点を当てる部分の選択、画像のトーンの指示など、「クリエイティブな入力」を行なったにもかかわらずに、です。

 

宇宙のオペラ劇場』は、著作権を持てないまま、あれよあれよという間にジェイソンに無断でNFTのマーケットで売り飛ばされ、世界中でデジタル絵画として販売されまくっています。ジェイソンもいちおー本家の自家通販でプリント画を販売してますが、さすがになんだかなぁ… (記事1  /  記事2)

 

ということでこちらジェイソンの呪文でできた『宇宙のオペラ劇場』

皆さんもどこかでみたことあると思います。すごい有名になったからね。

どうですか、これ。アートだと思いますか?

私は個人的にはアートだと思います。 (wikiには連作も載ってます、かっこいいよ!)

 油絵のタッチって似てる人が多くて、特に中世絵画っぽい油絵ってなると、正直私には見分けがつかない。

ここらへんの枝葉末節は著作権談義から置いといて、発想や受けるイメージなどを純粋に評価してあげて、気の毒なジェイソンの権利もちゃんと生まれるような時代が来るためには、

 

まずはこれらのソフトウェアの道義的違法性(つまり著作権者に無断で学習されたソフトウェアが生成をするという経緯)」がすべてなくなって、ほんとうにクリアな生成を行う技術というものが開発され、そして(これが大事なんだけど)それが本当にクリアであるということが完璧に保証されない限り、難しいのかもしれませんよね。

 

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自分が描いたイラストをAI学習から守りたいクリエイターのかたへ

 

以下のツールが現在出ています。

 

emamori(一部有料)    ---   説明のnote

Graze(無料)   ---  イラストレイターよー鈴木さんの記事

 

Nightshade(無料)    ---   使用方法を含む記事

(ご参考までに…)
emamoriがアップした記事「emamoriGlazeNightshadeの違いについて

 

・また、画面上に、文字や記号を置く「ウォーターマーク」を付けるのもありかなと思います。

※ただし、昨今すごい数のウォーターマークアプリが出ているようなので、使用する前に必ずアプリ名や運営会社、(会社国籍)、評判を検索して、調べてから自己責任で使用することをお勧めします。

絵を守りたくって使用したら逆にごっそり持ってかれちゃった、みたいなことだけは避けましょう。

 

クリップスタジオを使っている人はこちらが参考になりそうです
 

tips.clip-studio.com

 

今回は二年分のAI事情をぱんぱんに詰め込んだので、すごく長くなってしまいました。最後までおつきあいいただいた人、どうもありがとうございました。

 

+ - + 関連記事 + - + - + - + - + - +

こちらは、良い子の絵関連の教育に携わっている猫井が、AI絵がヒトの発想力に及ぼすネガティブな面を書いた記事。 興味ある人は読んでみてね!

nekoipsydoll.hatenablog.com

 

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